その昔、エロゲ雑誌が10万部以上発行されていた時代があってね…

美少女キャラクター誌に関する諸々。

月刊誌と美少女キャラクター誌の推定発行部数比較

先日の記事に対して「比較対象がないといま一つ盛衰が分からない」といったコメントがありましたので、比較対象として月刊誌の推定発行部数の増減について追加してみました。データ元は同じく「1997-2010 出版指標年報(出版科学研究所発行)」です。

【月刊誌】

推定発行部数 (万冊) 増減(万冊) 前年比(%) 前年比増減(%)
94 304,858
95 312,051 7,193 102.4% 2.4%
96 322,036 9,985 103.2% 3.2%
97 331,056 9,020 102.8% 2.8%
98 322,376 -8,680 97.4% -2.6%
99 309,116 -13,260 95.9% -4.1%
00 296,332 -12,784 95.9% -4.1%
01 289,118 -7,214 97.6% -2.4%
02 283,160 -5,958 97.9% -2.1%
03 281,954 -1,206 99.6% -0.4%
04 280,829 -1,125 99.6% -0.4%
05 281,788 959 100.3% 0.3%
06 274,659 -7,129 97.5% -2.5%
07 266,830 -7,829 97.1% -2.9%
08 254,569 -12,261 95.4% -4.6%
09 238,065 -16,504 93.5% -6.5%

【美少女キャラクター誌】

推定発行部数 (万冊) 増減(万冊) 前年比(%) 前年比増減(%)
94 310
95 444 134 143.2% 43.2%
96 596 152 134.2% 34.2%
97 746 150 125.2% 25.2%
98 681 -65 91.3% -8.7%
99 677 -4 99.4% -0.6%
00 711 34 105.0% 5.0%
01 888 177 124.9% 24.9%
02 781 -107 88.0% -12.0%
03 757 -24 96.9% -3.1%
04 647 -110 85.5% -14.5%
05 588 -59 90.9% -9.1%
06 521 -67 88.6% -11.4%
07 505 -16 96.9% -3.1%
08 458 -47 90.7% -9.3%
09 404 -54 88.2% -11.8%
グラフ

【美少女キャラクター誌と月刊誌の推定発行部数の前年比増減】

補足

1995-97年、2000-2001年の成長率を月刊誌の平均と比較した場合、その伸び率は著しいものでした。しかし2001年以降の落ち込み率も平均より酷い状態が続いています。つまり美少女キャラクター誌の発行部数は2001年までドカーンと増えて、2002年からはズドーンと減ったようです。

「出版指標年報」における美少女キャラクター誌に関する記述

「出版指標年報」では時々美少女キャラクター誌に関する考察が記載されているので、その内容をメモってみました。

【1991 出版指標年報】
パソコンゲームは大人のユーザーが多いパソコンユーザー向けならではのアダルトものが人気を呼んでいる。パソコンは一般ユーザーに普及がすすんでおり、ゲームを楽しむファン層は堅調に推移している。

【1993 出版指標年報】
パソコンゲームソフトの中の美少女ソフトと呼ばれるポルノゲームが人気を集めていて、92年には『パソコンパラダイス』(メディアックス)を皮切りに、『PCエンジェル』(高須企画)、『Bug Bug』(マガジンマガジン)の3誌が相次いで創刊された。『Bug Bug』は2号までは普通のパソコンゲーム情報誌だったが、3号目で美少女ものに転換した。こうした情報誌がいままでなかったため3誌とも売れ行きは良好だった。

1992年「PCエンジェル(現在は「PC Angel neo」)」、「Bug Bug」が創刊。「パソコンパラダイス」は隔月刊から月刊に。

【1994 出版指標年報】
美少女パソコン情報誌は前年から台頭してきた分野。『パソコンパラダイス』(メディアックス)、『PCエンジェル』(オデッセウス)、『Bug Bug』(マガジンマガジン)が先行したが、ソフトの増加にともない隔月刊だったのを6月までに相次いで月刊に変更した。6月に創刊された『メガストア』(白夜書房・創刊号9万部)は初めから月刊刊行。最大部数の『パソコンパラダイス』は13万部発行、他は約6万部でそれなりに売れている。増刊でも『パソコンプレッセ』(三和出版・隔月刊)が3月号から、『電脳通信PiPi』(マガジンボックス・隔月刊)が6月号から、『電脳Beppin』(英知出版・隔月刊)が8月号から発刊、合計7誌が競う激戦分野となっている。

1993年「メガストア」、「パソコンプレッセ」、「電脳通信PiPi」、「電脳Beppin」が創刊。後半の3冊は休刊もしくは廃刊になっていますが、詳細はよく分かりません。

【1997 出版指標年報】
美少女パソコンゲーム誌は新雑誌が増え百花繚乱。アダルト系出版社の独壇場で、今年は『ファンタジェンヌ』(晋遊舎・5万5千部)が増刊から独立創刊。9月にはアスキーの系列会社アスペクトが『E・Login』を10万部で創刊、増刊でも数誌試みられていて、市場規模は倍増した。これはパソコン市場の急成長とユーザーの増加が背景にある。

1996年「ファンタジェンヌ(現在は「PUSH!!」)」、「E-LOGIN(2003年12月号で休刊)」が増刊から月刊に。

【2001 出版指標年報】
美少女ものは好調維持。ビジュアルを重視したソフトな表現の新雑誌『カラフルピュアガール』(ビブロス)は好売れ行き。

【2002 出版指標年報】
美少女系は同24.9%増と好調。『TECH GIAN』や創刊誌『電撃姫』(メディアワークス発行/角川書店発売)といったジャンルトップ誌は10万部近くを発行している。特にストーリー性重視のソフトH系ゲームは、女性ユーザーも少なくない。また、ゲームのみならずコミックやアニメ市場においても、美少女需要は拡大基調だ。以前はマニア男性向けとして捉えられていたジャンルだが、若い世代には抵抗なく受け入れられている。

2001年「電撃姫(現在は「DENGEKI HIME」)」が10万部で増刊から月刊に。

【2003 出版指標年報】
成長市場だった美少女関連は同12.0%減と頭打ち。本来マイナーだからこそ光るジャンルだけに、メジャー展開には自ずと限界があったのではないか。

美少女キャラクター誌衰退の始まり。

【2004 出版指標年報】
創刊20周年を迎えた『コンプティーク』は9月号より美少女キャラクター誌にリニューアルした。美少女系は同3.1%減、1月に『メガミマガジン』(学習研究社・推定4万部)が創刊し、計14誌が競合する激戦区だ。全体的には伸び悩み状態だが、美少女ニーズは依然底堅い。キャラクターに対する嗜好表現として“萌え”という言葉が流行、ソフトな表現の雑誌も増え、ゲーム情報というよりキャラクター誌としての性格が強まってきた。

2003年「メガミマガジン」が増刊から月刊に(「エロゲ雑誌の発行部数の推移」と言えないのは、数値に「メガミマガジン」、「コンプティーク」、「電撃G's magazine」が含まれているから)。

【2005 出版指標年報】
<美少女系>は同14.5%減と低落傾向、『ディアマイ…』など2誌が休刊した。アニメやコミックなどで“萌え”が氾濫しており、このジャンルならではの特色が薄れてしまった感がある。

【2006 出版指標年報】
アダルト誌やキャラクター誌を含む<美少女系>は同9.1%減と下げ止まらない。“萌え”があらゆるメディアに浸透し特色が薄れていく一方だ。ゲーム情報や美少女のヴィジュアル以外で、いかに差別化を図るかが課題となっている。

【2007 出版指標年報】
<美少女キャラクター誌>は推定発行部数前年比11.4%減。02年以降、5年連続で低落している。ゲーム情報よりもCGヴィジュアルが主力のジャンルだが、CGはむしろインターネットの方が相性が良く、雑誌の訴求力が低下している。

補記

「萌えの拡散」については数値で表すことが出来ないので何とも言えませんが、「パソコンの普及」と「インターネットの普及」と「推定発行部数」については数字で表せるのでグラフにしてみました。「パソコン世帯普及率」と「インターネット人口普及率」のデータは「総務省 情報通信統計データベース 『通信利用動向調査』」から引用してます。

【美少女キャラクター誌の推定発行部数とパソコン世帯普及率】

【美少女キャラクター誌の推定発行部数とインターネット人口普及率】

確かにパソコン普及率と連動するように発行部数が上昇していました。発行部数の方が普及率より早くから上昇しているのは、一般ユーザーより数年早くオタクの間にパソコンが普及したと仮定すればいいのかもしれません。そしてインターネット人口普及率と反比例するように発行部数が減少していきます。グラフの形だけ見れば「美少女キャラクター誌はパソコンの普及と共に増加して、インターネットの普及に伴って減少した」様に思えます。が、実際の因果関係については調べようがない為、「美少女キャラクター誌の発行部数とパソコン普及率及びインターネット普及率との間には、何らかの相関があるかもしれない」ぐらいの結論にしておきます。