エロゲは男性用ポルノなのか?

進化心理学の本を読んでいたら面白い事が書いてあったのでちょっと引用してみます。

女だけが楽しむ「ポルノ」の秘密 (進化論の現在)

女だけが楽しむ「ポルノ」の秘密 (進化論の現在)

男が夢見る「ポルノの世界」では、セックスが一番の目的であり、セックスによって肉体的な満足がもたらされる。この世界には、求婚もなければ、約束も、永続的な人間関係もない。ポルノ動画では、筋書きらしきものはほとんどなく、その代わりに性行為そのものをたっぷり描き、女性の肉体を見せること、とりわけ、表情や乳房、女性器をアップで写すことに重点が置かれている。女性が夢見る「ロマンス小説の世界」はまったく様相が異なる。ロマンス小説のヒロインが目指すものは、セックスそのものではない。ましてや、知らない人との感情を伴わないセックスなどではない。ロマンス小説には、恋物語を中心とした筋書きがあり、ヒロインがさまざまな障害を乗り越えて、お似合いの男性の心を射止め、最終的には結婚にいたる。

要約すると「男は映像を好み、女はストーリーを好む」という事なのですが、これをエロゲに当てはめて考えてみると、「抜きゲー」と称されるエロゲについては紛うこと無く「男が夢見る『ポルノの世界』」に属していると思うのですが、「純愛ゲー」と呼ばれるエロゲについては「女性が夢見る『ロマンス小説の世界』」の要素が多分に含まれているようにみえます。また、この本ではロマンス小説の要素として以下のようなものをあげています。

  • 読者が自ら共鳴できるような、自分なりの考えを持った人物が登場する
  • 視点がヒーローとヒロインの間を行き来する

ここら辺の要素については「純愛ゲー」によく包含されているようですが、

  • セックスについての描写はそれが目的であるというよりは、ストーリーを進めるうえでの脚色である

については作品によって異なってくるでしょう。どちらかと言うと昔の純愛ゲーはこの傾向が強かったようで、いわゆる「エロゲにエロはいらない」という言説に繋がっていたのだと思われます。そしてこれらの意見は今でも時々見受けられます。そして

  • 性行為のシーンについては心理的描写がほとんどで、視覚的描写はほとんどみられない

という点についてはおそらく逆でしょう。正確には「性行為のシーンは視覚的な描写がほとんどで、心理的な描写は性行為が終わった後のピロートークなシーンで行われる」といった感じかな。

従って男性用ポルノと女性用ポルノの要件をふまえて「純愛ゲー」を分類してみると、ちょうど男性用ポルノと女性用ポルノの間に挟まっているようにみえてしまう訳です。ただ、その位置は昔に比べて男性用に近いのかもしれません。これについては、エロシーンが本質的な構成要素に含まれておらず、ストーリーを進めるうえでの脚色としてしか入れられなかった場合、おまけやエピローグに性行為なイベントCGを大量に挿入している作品や、HCGが少ない「純愛ゲー」が今出た場合を想像してみれば、まぁ、分かると思います(笑)。