フルプライスエロゲの平均プレイ時間は1本あたり20時間

エロゲのボリュームインフレに関する記事を色々と読んでたら、「はて、エロゲのプレイ時間はどういう経年変化をしているのだろう?」と思ったのでちょっと調べてみました。

エロゲー批評空間におけるプレイ時間

エロゲプレイ時間についてまとまったデータがあるのはやはりここです。というか、ここにぐらいにしかありません。従って、エロゲー批評空間から以下の条件に従ってプレイ時間を抽出してみました。

  • 価格が9,240円(税込)以上のタイトル(ロープライスやミドルプライスが混ざるとプレイ時間の平均を押し下げてしまう為)
  • ヴィジュアルノベル形式のみとし、SLGRPG、ACTなどは除外する(いわゆる「やりこみゲー」はプレイ時間の平均を押し上げてしまう為)
  • プレイ時間の登録数が10以上あるタイトル(登録数が少ないとプレイ時間の平均に誤差が出やすくなる為)
  • 商業作品のみとし、同人作品は含めない
  • 18禁作品のみとし、一般作品は含めない
フルプライスエロゲのプレイ時間の経年変化

上述した条件に従ってフルプライスエロゲのプレイ時間を年毎にまとめたのがこちらです。

これは「箱ひげ図」と呼ばれる、「データの散らばり具合」を要約して示す統計学的グラフです。このグラフに関する説明は次の図を参照して下さい。

まず、この「箱」には全データの半数(25%から75%)が含まれます。これらのデータは、集団において中間層を形成することから、「順位的に一般的なデータ」、すなわち「集団を代表するデータの集まり」とみなせます。そして箱の中で「最も一般的なデータ」を1つ挙げるとすれば、それが全データを代表する「中央値」です。一方、「ひげ」が示す範囲内のデータは、「集団の両極に存在するやや特殊なデータ」と見ることができます。

それではその全データを代表する「中央値」の変化について見てみましょう。2004年のプレイ時間中央値はおよそ「17時間30分」です。それが2005年にはおよそ「29時間」になり、いきなり10時間以上増加します。そしてこの増加は他の年にはまったくみられない特殊な変化であることもグラフから読み取れると思います。しかしこの傾向は続かず、翌2006年にはおよそ「23時間」に減少します。この時期にプレイ時間のインフレというかバブルが発生し、一気に弾けたような感じです。その後2007〜2009年にかけてプレイ時間はほぼ「22時間30分」で横ばいが続いていたのですが、2010年に20時間を切ってしまいます(約19時間)。そして現在はそのまま横ばい状態が続いているようです。つまり、

フルプライスエロゲのプレイ時間は徐々に減少していた

という訳です。そして近年「箱の上下」もしくは「ひげの上下」が中央値に近づく傾向にある事から、

フルプライスエロゲのプレイ時間が20時間前後に収斂している

と考えてよさそうです。では次に「エロゲの長さについてユーザーはどう思っているのか?」について同じくエロゲー批評空間から抽出してみました。

エロゲは長い?短い?

こちらのデータ元として使用したのはPOV「時間:とんでもなく短い。短すぎるよ、このゲーム。」と「時間:ひたすら長い。長すぎるよ、このゲーム。」です。こちらはデータ登録数が5以上のタイトルをカウントしてみました(同人、一般作品のみを除外しています)。

こちらのグラフでは2004年から2009年にかけて「短いよ!」「長いよ!」共に増加し、2010年から両方とも減少する傾向がありました。従って、2010年頃からプレイ時間の過不足感がなくなり「ちょうどいい」と思っているユーザーが多くなったと考えられます。そして先のグラフでプレイ時間のバブルが発生したと思われる2005年は「短いよ!」が最小値を記録しています。しかし「長いよ!」はそれほど多くはありません。つまり「プレイ時間は長いんだけど、その長さに不満はなかった」という時代だったのではないでしょうか。逆に「長いよ!」が最も多い2009年は「長けりゃいいってもんじゃねぇよ!」というタイトルが多かったのではないかと推測されます。で、この20時間というプレイ時間ですが、

1タイトルで読むテキスト量はだいたい1M(メガ)から2Mです。1Mのプレイ時間の目安は、だいたい18〜20時間くらい。ボイスを飛ばし読みでもその半分くらいです。
平均年収は300万円以下?! 衰退化が止まらない美少女ゲーム業界の現状 (Business Journal 2013/02/24付け)

こちらの記事と、エロゲ批評空間といういわゆるエロゲマイスター達が集う場所での結果という事を勘案すると、テキストサイズに変換した場合「2M」ぐらいになると思われます。

参考資料

プレイ時間に関する調査をする前にこんな記事を読んでいたというまとめ。

2004年
2006年
2013年